内視鏡下手術に関して
内視鏡下手術は、患者さんの体の負担を可能な限り少なくする手術として、外科系各科において広く実施されるようになってきております。内視鏡下手術の進歩はめざましく、婦人科領域においてもその適応疾患はどんどん拡大しており、手術あたりの腹腔鏡手術の割合は年々増加しています。大きな利点は侵襲の少ない「minimal invasive surgery」であることです。開腹手術を回避することにより、入院期間の短縮、社会復帰までの期間の短縮、創が小さく整容性に優れ、手術による2次的癒着発生が少ないことは、現代の女性のライフスタイルにあった治療であると考えます。
東海大学医学部産婦人科では1982年から内視鏡下手術を導入し、特に不妊症の女性に対する原因検索のための検査、妊娠を目指した手術に力を入れてきました。現在では婦人科良性疾患のほとんどが手術の適応となってきています。また2014年度から婦人科悪性腫瘍に腹腔鏡手術保険適応が見なされ、一部の子宮体がん症例に対して腹腔鏡手術が導入されてきています。
腹腔鏡下手術について
腹腔鏡下手術は,腹壁の小さな孔より内視鏡を腹腔内に挿入し手術する方法です。これまで行われていた開腹術に比べ、手術後疼痛の軽減、入院日数の短縮、社会復帰までの期間短縮など手術を受ける方の様々な負担を大きく軽減できる方法です。
東海大学産婦人科では良性疾患(不妊症,子宮筋腫,卵巣嚢腫など)及び悪性疾患(子宮頸癌,子宮体癌など)にも積極的に腹腔鏡下手術で対応しています。いかなる腹腔鏡下手術も経験豊富な日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医を中心として行い、適切な術前術後管理のもと、安全に提供できる体制を整えています。
子宮鏡下手術について
子宮鏡下手術とは、子宮専用のカメラ(子宮鏡)を子宮の入り口から挿入し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどを子宮鏡の先端にある電気メスを操作し切開・切除する手術です。
お腹に傷をつけないので手術後の痛みが少なく、手術翌日に退院可能です。
主な内視鏡(腹腔鏡、子宮鏡)下手術の適応となる疾患は以下の通りです
子宮内膜症 | 病巣焼灼、病巣除去、癒着剥離、嚢胞摘出 |
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異所性妊娠 | 卵管線状切開、卵管切除 |
卵巣嚢腫 | 嚢腫摘出、付属器切除 |
卵管性不妊 (卵管留水症など) |
卵管形成術(癒着剥離、卵管開口、端々吻合) |
多嚢胞性卵巣 | 腹腔鏡下卵巣多孔術 |
子宮筋腫 | 子宮全摘、筋腫核出(腹腔鏡、子宮鏡) |
腟欠損症 | 腹腔鏡補助下造腟術 |
子宮内膜ポリープ | 子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術 |
子宮奇形 (中隔子宮など) |
子宮鏡下中隔切除術など |
子宮内腔癒着 | 子宮鏡下癒着剥離術 |
子宮頸癌 | 腹腔鏡下広汎子宮全摘術 |
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子宮体癌 | 腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清を含めた子宮体癌根治術 |
卵巣癌 | 審査腹腔鏡 |
当院での腹腔鏡手術における入院期間および退院後について
腹腔鏡下手術は入院~退院までで4泊5日を想定し、手術後3日で退院する予定になっています。子宮鏡下手術は2泊3日の予定になっています。ただし術後の状態に異常がある患者さんにおいては退院が延期となることもあります。退院後はだいたい2週間後に外来を受診していただき、術後経過を確認します。また経過に問題がなければ多くの場合、軽い仕事は術後1週間程度から、運動などは術後4週間で可能となります。
おわりに
手術件数は年々に増加しており、現在では年間300例以上の内視鏡下手術を行なっています。今後も患者さん自身と相談を繰り返しながら、最も症状に適したテーラーメードな医療を行いたいと考えております。